戦争文学10選~戦争を考えるとっかかり

とっかかり文学

はじめに

今日。2020年8月14日です。

夏休み・お盆時期真っ只中でありますが、ちょうど今から75年前の1945年8月15日に国民に向けて、天皇陛下からラジオ玉音放送がありました。

「然れども朕は時運の赴く所 堪え難きを堪へ 忍び難きを忍び 以って万世の為に太平を開かんと欲す」

というNHKとかでよく流れますね。天皇陛下の肉声が正午に流れたのです。これをもって日本はポツダム宣言を受諾して、太平洋戦争が終結したことを全国民に伝えて戦争は終結したのです。

私のおじいちゃんは、父方も母方も戦争経験者であります。

父方の祖父は、階級はわかりませんが陸軍に属していて、満州に従軍致しました。何でも鉄砲の流れ弾が右腕に当たり、負傷して帰国したそうです。

母方の祖父は、海軍の予科練にいて訓練を受けていました。年齢的にまだ中学生くらいだったということで、学生の時に終戦を迎えましたが、飛行機の訓練を受けていて、戦争があと数年長引いていたら、あるいは特攻隊に志願していたかもしれない、と言っていました。

おじいちゃんは二人とも、まあ頑固でしたね。父方の祖父には可愛がってもらった記憶がなく、微かに覚えているのは、どこか旅館が誰かの家で走り回っていたところを呼び出されて、「おまえはもう少し大人しくしていろ」と呵られた覚えがあります。厳格な感じで。

母方のおじいちゃんは、僕のことを寝床に呼んで、もうこれでもかって、予科練の頃の話をしてくれました。

あまりにしつこく同じ話をするものだから、本当に子供ながらに嫌でしたね。

例えば、よくしていた話で10回以上、聞かされました。予科練で(どんなところかよく知らんけど)は、いくつかの班に分かれて相撲や騎馬戦みたいなことを毎日、午後の夕食前にやっていたそうです。その時、勝負事ですからみんな真剣に頑張って勝とうとするのですが、やはり負けてしまうこともあったようです。そして、一番どべか尻から2番目になって夕食の時間になると、腹が空いて、今にも齧りつきそうになる食事を目の前にして、班長がおもむろに次のようなことを言ったそうです。

「貴様らは恥ずかしいという気持ちがないのか。なんだ今日のざまは」からはじまって長いお説教があるそうです。それで食事を待っていると「貴様らに食事をする資格があるか?」と問うてくるそうですよw

やばいですねw 「貴様らに食事をする資格なし!」って言って班長が皿をひっくり返していくそうです。ブラック企業の上司でもそんなことしないですよね。

その頃のことを思うと、毎日の食事がありがたい、と祖父は言っていました。こういう話をしてくれた祖父も2017年に他界しました。

まあ、世代的にはおじいちゃんが戦争経験者というのは、僕らの世代にはあるあるなんですが。軍国教育を受けていた世代の祖父たちは、まあ石頭というか、自由でないというか。

というわけで、今日2020年8月14日と8月15日は戦争の記事を書きたいと思います。

今日は戦争文学書10選です。完全に独断と偏見で選びましたが、祖父母の戦争中の話とリンクして面白く読めました。

「やすらかに今はねむり給え」林京子


太平洋戦争において、日本が原爆を投下されたのは歴史で習った通りです。1945年8月6日に広島に、8月9日に長崎に原爆が投下されました。

林京子さんという小説家は、1930年生まれで、誕生と共に父親の仕事の関係で上海へ移住して、1945年終戦の年に帰国したそうです。

僕の母方の祖父と同じくらいの生まれですね。

終戦の年に日本に帰ってきたということは、林京子さん、何事もなかったようにおもいますが。彼女1945年8月9日に長崎の三菱兵器工場に学徒動員されていて、被爆したそうです。ただ被爆地にいたのですが、運の良いことに助かったということです。被爆手帳を持っていたらしいですが。

この小説は、長崎の兵器工場に動員された女学生の被爆までの記録を刻銘に主人公が負っていくというお話です。原爆が投下されて、生と死の狭間にいた女学生たちの生々しい「生きていた」証を探っていく物語です。

題名の「やすらかに今はねむり給え」って言葉が読後すごく哀しい鎮魂の言葉に聞こえます。

この方が亡くなったのが2017年2月19日ということで、生まれもなくなった年も僕の祖父と同じみたいで因縁を感じます。

「俘虜記」大岡昇平


本を開いてみて、まず字が細かく長いということです。まあ、それにしても内容が固くなくてユーモアに溢れているので、読み進めていくと面白くなります。ただ分析的な文体なので、好みがあると思います。

俘虜記という題名は。その名の通り、主人公である著者がアメリカの俘虜になるのですが、冒頭にアメリカ兵と遭遇する場面があり、「米兵を何故撃たなかったか」という、若いアメリカ兵に銃口を向けたシーンで、撃たなかったことを論理的に説明します。

そういう前半部分から、捕らえられて「俘虜」になるのですが、これは大岡昇平さんの実体験だそうです。

戦争捕虜っていると、祖父が言っていたのですが、ロシア人が最も人道上卑劣であり、次に酷いのが日本人だと言っていました。そしてアメリカ兵は紳士だったらしいです。

そのアメリカ兵の「俘虜」になって、解放されて帰国するまで、延々と、分析的な見解が続きます。

「野火」大岡昇平


この小説も大岡昇平さんらしい、哲学的な見解を主人公が語っていくます。

ググってから知ったのですが、なんでも塚本晋也監督兼主演で映画化されてますね。1959年にも古い映画になっているそうです。

物語は戦中、敗色濃厚なフィリピンのレイテ島。主人公田村一等兵が、肺病で野戦病院に入院し、食料不足のために追い出され、米軍の砲撃でフィリピンの森林で迷走するお話です。

極限の状態で、自然のなかで軍の仲間たちとのやり取りをして、最後は神に傾倒していく物語です。

読んでいて思ったのは武田泰淳の小説「ひかりごけ」のように極限にいる人間を喰うというカニバリズムも描かれております。

短い小説ですが、内容が濃すぎて考えさせられます。

「きけわだつみのこえ」日本戦没学生記念会


これは太平洋戦争に動員され始めた学徒たちの「手記」であります。

有名なので知っているとか、聞いたことある、という人も多いと思います。

これは通しで読んだというより、パラパラと時々、めくって読んでいるいるといった感じです。

それにしても、若いのに当時の学徒たちは凄いです。

哲学的、文学的、詩的。愛に満ちあふれていて、特攻隊志願兵が、自分たちがこの世からいなくなった後の両親や恋人に宛てた手紙など読んでいると、胸が締め付けられます。

当時の祖国である日本を憂うところなんかもありまして、右派的ナショナズム的な見解もありますが、それもまた切実で頭が下がります。

石原慎太郎都知事が、あんなもの(「きけわだつみのこえ」)嘘だ、と言ったことがありますが、どう嘘なんでしょうか? あんな手記、誰が嘘で書くのでしょうか。

「黒い雨」井伏鱒二


有名な小説です。戦争文学を紹介しているサイトに必ず出てきます。

最近「黒い雨訴訟」なるものが取りざたされています。

「国の援護対象区域外にいた原告84人を被爆者と認めるかどうかの司法裁判」が「黒い雨訴訟」ですが、まさにこの小説も8月9日の広島原爆投下の日を題材にした小説です。

先ほど紹介した、林京子「やすらかに今はねむり給え」は長崎の被爆を追っていく小説ですが、この小説はリアルにその場に居合わせた主人公と、原爆の後遺症に蝕まれていく姪との物語です。

戦争と人間というものにスポットを当てた意欲作です。

「魚雷艇学生」島尾敏雄


「死の棘」で有名な島尾敏雄さんの戦争体験記です。

この小説も「野火」と同じく戦地での経験をもとに書かれているので、過酷さが伝わってきます。

ただ大岡昇平さんと同じで、ちょっと難しいです。

読んでいて、予科練にいた僕の祖父の話とリンクして、途中面白かったですが、とにかく文学的で長かったら最後まで読めなかったと思います。

島尾敏雄さんというと「小さき者へ」という、自分の息子たちに対して書いた手紙があるのですが、すごく感動します。

YouTubeに朗読されたものがあるので、よかったら聴いてみてください。語り手の人が泣きながら朗読しています。僕も恐らく、語りべなら泣いてしまうでしょう。

「アメリカひじき・ほたるの墓」野坂昭如


「火垂るの墓」ってジブリ映画ですよね。

だけど原作は野坂昭如さんです。野坂さんというと、生前「TVタックス」というビートたけしの番組に出ていた記憶と、大島渚監督に舞台上でワンパンしたw ときの映像が印象的な小説家ですね。

なんと言っても「火垂るの墓」って切実な文学作品ですよね。

戦争孤児の兄と幼い妹に話です、考えただけでも胸が締め付けられます。

それとは逆に、野坂昭如さんってユーモアたっぷりな方で、「アメリカひじき」って、アメリカの紅茶を「アメリカのひじき」だと思って食べたとか、闇市のお話なのです。何か戦後の劣等感が伝わってくる短編です。

野坂さんの作品は、どれも見解がユニークでおもしろい人だなとおもいます。

「落日燃ゆ」城山三郎


広田弘毅という元首相で、戦中は文官という役職についていた大日本帝国の中枢にいた人の生涯を描いたお話です。

東京裁判で、東条英機以下の者をS級戦犯として、絞首刑に処した中の一人です。ですから靖国神社に奉られている人だと思います。

何か作者と血縁者かな? 裁判に発展したみたいですね。

2009年に北大路欣也主演でドラマ化されたようです。

何でも広田弘毅は、太平洋戦争に反対をしていた人物で、それでも戦犯に仕立て上げられたことに自己弁護もせずに、甘んじて戦争責任を受け入れたみたいな、そういう物語です。

とても卓越した文体で、まさに日本人的な戦争責任を自分に課したという立派な軍人の物語です。

 

「永遠の0」百田尚樹


百田尚樹さんって発言とか炎上したり、お騒がせな人ですが、この作品に関してはよく調べ上げてあります。

この物語も、「やすらかに今はねむり給え」と同じく、戦争体験者をフリーライターの佐藤健太郎という主人公が追って真実を見いだしていく物語です。

特攻隊に志願した宮部久蔵という架空の人物の人間像が物語の中で明るみに出ていきます。

難しい文体ではないので読みやすいと思います。

 

「本当の戦争の話をしよう」ティム・オブ・ライエン(村上春樹訳)


ここまで「太平洋戦争」の9つの小説を紹介してきましたが、最後はティム・オブ・ライエンというアメリカ人の短編小説です。

村上春樹さんが翻訳しております。

実は、この本に関しては、明日の記事で取り上げたいと思っております。

ですから、ここでは内容にふれることはしませんが、そもそも戦争って何だろう? 戦争って理屈で語られるものなの? っていう筆者の言いたいことが伝わってくる物語です。

この短編を読んだのは2001年だったと思います。

刊行されたのが1990年なので、そうとう古い小説ですが、太平洋戦争よりあとのヴェトナム戦争に従軍したアメリカ兵の小説家が、いくつかの物語を語っていて、スピリチュアルな感じのストーリーとかホラーみたいな描写もあっておもしろいと思います。

ちなみに作者の主張は「戦争とは道理や筋というものがない」というもので一貫されています。

おわりに

だいたいこんな感じです。

9つは「太平洋戦争」に関する小説でしたが、10個目のティム・オブ・ライエンの小説は、戦争の根本にあるものを主題にしています。

よかったら、どれか一つでも手に取って読んでみてください(^_^)。

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