心理学の役割
心理学って興味持っている人多いですよね。大学生になると「心理学を勉強してみたい」って人がいませんか? 結構な数、いますよね。それってなんでか理由はわかりますよね。心理学をやりたいって、結局、人の内面のことを知りたいって意味ですよね? 人の心を知りたい。
僕が大学に入って、一番初めにやろうと思ったのが哲学でした。高校の時に興味があった心理学の本を見て、これは自分が知りたいことではない、と思ったからです。
「パブロフの犬」って知っていますか? 毎回、餌の時間に合わせて音を鳴らすと、犬は餌が出てこなくても唾液分泌が多くなるとか。心理学の行動原理に関する有名な研究ですよね。心理学ってこのような行動心理の研究が主で、なんだか分かるんだけど、おもしろくない。途中まで心理学に興味を持っていた人が行動心理学の実験の話ばかり聞かされていると、心理学から離れていく傾向にあるらしいですね。それで内面を扱うなら哲学でしょって僕は思って、哲学を学ぼうと決心しました。社会学部でしたけど。
それで、僕は学問の中核というか、その分野の根本的な意味を知らないと気が済まない質なので、哲学とは何か、その意味を知ろうと努力しました。同時に、似たような人間一般を扱う社会学も、探求していきました。講義を聴いて、本を漁って、先生に質問して。
するとだんだんわかってきたのです。木田元さんの著作に出会って、哲学は「形而上学」に原点があり、社会学は「人と人との関係・人間の間」にある全ての事象だということに行き着きました。そうやっていくと、文系って全て人ありきなんだなって気づいたんです。これって人文学系っていうくらいだから当たり前ですけどね。
それで、分野の垣根を越えた研究が文系には、結構あって分野ごとの境界線は曖昧でした。そんな中で「精神分析学」を知って、その流れで「心理学」の根幹についても考えてみました。
心理学は人の心を科学することによって、その理解を社会福祉に役立てていこうという人類の取り組みなのです。
調べて行くと、心理学も行動心理学から始まっているのですけど、枝分かれした分野がたくさんあったのです。
臨床心理学・発達心理学・性格心理学・スポーツ心理学・数理心理学・知覚心理学・社会心理学・動物心理学・犯罪心理学・経済心理学・深層心理学(精神分析学)
だけど、研究は行動原理主義なのかなって思いました。心理学の先生に言わせれば、違うと言われるかもしれませんが。
フジテレビに「ホンマでっかTV」て人気番組ありましたよね。あれに心理学の先生が多数出演していました。植木先生という女性の心理学者が、結構、驚くような研究結果を述べているのが印象的な番組ですよね。あの先生も、行動心理学を基礎として、一般的な人間行動から、心の普遍性を提唱していますよね。
心理学のとっかかりは、行動心理学という人間や動物の行動を観察・分析することで、心のありようを発見する学問であることを今回、紹介していきます。
心理学ができるまでの歴史的変遷
心理学が創始されたのは、19世紀になります。
それまでは、心を扱う学問は専ら「哲学」でした。プラトンとアリストテレスから始まる「形而上学」的な人間の「存在」を問う学問です。
https://tokakari.blog/哲学のとっかかり/哲学の全体像/
デカルト「我思う故に我あり」です。どんなに全てを疑って疑いえないことがる。自分の存在を認識している限り、自分という存在が最後に残るという明晰判明です。
デカルトは精神と肉体を切り離して考えました。「肉体は精神の支配下にある」と考えた。これに対して、ロックやヒュームなどの経験論哲学者は、経験によって人は万物の測定が可能になる、という経験論を展開しました。数学や物理などの自然測定は、経験によって自然の尺度を感覚は獲得していっているという論理です。
この経験論哲学は、心理学に先駆けて、何かを連想するときに尺度的感覚を獲得するという経験論に基づいて、「連想心理学」というらしいです。
この時代はまだ、心を科学するという試みはありませんでした。
心理学が産声をあげたのは、心を物理学的に観察していこうという物理学者フェヒナーから始まります。
心理学前史
これまでの哲学的な心の在りようから、物理学者であるフェヒナーが心理的な感覚の量を測定しようと試みました。光の刺激を測定して感覚器の量を測定することで、刺激と感覚の比例関係を提唱しました。「刺激が強いほど人間の感覚の量も比例して多くなるが、ある一定の地点から感覚量は安定する」という理論を科学的実験によって研究しました。
それをうけたヴェーバーが、人間の感じる重さの感覚器の量を測定して「精神物理学」という心理学の基礎をなす研究を行い、心の測定がここではじめて科学的に行われたのです。
心理学の誕生
ライプチヒ大学のヴントは実験で、人に刺激を与え続けて、被験者に刺激とか感覚を与えて、いちいち内容を聞き取ることで心理の実験を行った。これを内観法といいます。ヴントは、心の中にある様々な要素が「統覚」されて、一つの感情を作り出すという構成主義倫理学を提唱しました。
このヴントの理論に反論したのが、ドイツのヴェルトナー博士やコフカ博士というゲシュタルト心理学を提唱した学派でした。ゲシュタルト心理学ってのはヴントが感覚があらゆる要素から成り立っているという考えを否定し、一つの纏まりとしてある感覚器の構造を解明することを念頭に起きました。
第一心理学・精神分析学
オーストリアでナツメウナギの神経系の研究をしていたフロイトが、あるとき人には意識できない領域があり、そういったものに支配されているのではないかという理論を打ち立てました。
https://tokakari.blog/精神分析とっかかり/ジャック・ラカン入門/
すでに精神分析の基礎は「とっかかりブログ」で話題を進めていますので、みなまでいいませんが、フロイトが人間の「無意識」を発見しました。この無意識の領域をフロイトは性的な「抑圧」によって説明しましたが、フロイトの弟子スイス生まれのユングが「集合無意識」なる領域を主張して、フロイトとユングは決別しました。
この「無意識」の理論は賛否があり、フロイトの傾倒する人、ユングに傾倒する人、まったく批判的な研究者と、現代では大きく別れています。
この「無意識」の領域の研究を第一心理学といい、また深層心理学といいます。
まあ、心理学に興味があるって人は、精神分析はおもしろいと感じるでしょうから、そこからやってもいいんじゃないかな。
第二心理学・行動心理学
ここからが、現代心理学の基礎的な分野になります。
行動主義心理学の実験方法は本家の「心理学」的方法といってもいいんじゃないかと思います。
心理学は人間の行動のみを観察して、そこから心を導き出すのがいいという主張です。行動主義の元祖は動物心理学者のワトソン(アメリカ)です。彼は、人間意識を研究してもそんなに正確なことが分かるわけではない、動物の行動観察を通じてのみ心理は掴めるという主張をしました。
つまり、心理学に興味を持っている人が、心理学からだんだん遠ざかっていくのは、行動を観察してばかりいて肝心の心的な核心を研究対象にしていないようにみえるから、そのように心理学から離れてしまうのだと思います。
ワトソンは動物に刺激を与えて、それが後に習慣となることを突き止めました。
更にアメリカの研究者トルーマンやスキナーは実験を通じて、行動は能動的な意志をもって学習が進むことを実証しました。
スキナーはスキナーボックスと言われる実験装置を作って、マウスがレバーに触れると餌が出ることを実験により分析し、動物の学習能力によってマウスが能動的に餌を自分から獲られるようになるということを証明しました。
まあ、行動主義って「ホンマでっかTV」でも、植木先生などが度々実験の詳細を語ることがありますが、まさにあれが心理学であり、行動観察による心理解明が元祖心理学といってもいいんじゃないかと思います。
直接、心のありように触れると言うよりは、実験によって分析するみたいなのが心理学の基礎だとすると、ちょっと味気ないと思う人も出てくるのかもしれませんね。
第三心理学・マズローの欲求5段階説と人間性心理学
最後にマズローになりますが、これってビジネスの世界でも、度々出てきますよね?
人間の「欲求5段階説」です。
マズローの理論である「欲求5段階説」を僕の人生を例にして具体的に示します。
まず、今の時代、僕は食べることに困りません。それから今やっている仕事も睡眠時間の確保、更に毎日、ブログを更新するくらいの時間は取れます。そのくらい時間に自由が利きます。その代わり、お給料は少ないですが。この「生理的欲求」に僕は困っていません。
この「生理的欲求」が満たされているので、今度は身の安全が保証されている「安全欲求」ですが、これも満たされています。この「生理的欲求」と「安全欲求」を基本的欲求と言います。
その次の次元に「所属と愛情欲求」という他人と仲良くしたい、どこかに所属してその中でうまくやっていきたいという欲求が生まれます。これは正直、学生時代の一時期、完璧に満たされない期間もありました。この欲求が満たされていないので、学生時代に、次の段階である「自尊欲求」はそんなになかったのかもしれません。
現在は「所属と愛情欲求」は十分満たされております。「自尊欲求」はというと、これも十分な知識量に到達したと自負できますから、この欲求も満たされております。
最後の次元である「自己実現欲求」、これは満たされていません。ブログを始めたのもこの欲求を求めているのかも知れません。
このように5段階の欲求充足が人間にはあり、環境がより良いものでも、際限なく満たされない欲求が付きまとうものです。ちなみに「所属と愛情欲求」「自尊欲求」「自己実現欲求」を成長欲求と一括りにいいます。
でも、実際「自己実現」まで到達した人は次は、どこに欲求が向くんでしょうね?
このマズローの理論に対して、アメリカの心理学者ロジャースが承認欲求を、「動機付け過程は全て成長過程である」という「人間性心理学」を打ち立てます。
現代心理学・福祉国家のための心理学
ロジャーズは、経験を「自己体験」とよんで、これと自己実現のイメージ(理想)を「自己概念」と呼んでカウンセリングによって「自己体験」と「自己概念」を一致させていく、「来談者中心療法」を提唱します。
「来談者中心療法」ってどういうものかというと、臨床心理学者と患者が面談して、「自己体験」を語ってもらいます。
例えば、

「私、小さい頃に一度ブスだと好きな男性にいわれたことがあるんですよ。それ以来、すごく美容に執着するようになって、止めどなく化粧品や美容商品を買ってしますのです」

「あなたは特に落ち度がなく、その時たまたま思いつきで言われたことに傷ついたのですね。容姿のことはあまり言うことはできないですが、あなたは十分魅力的な大人に成長したように見受けられます」
このように「自己体験」を肯定的に捉えて、「自己概念」と一致させていくのがロジャースのカウンセリングになります。ここでは女性は「自己体験」と「自己概念」に葛藤を抱いていますが、それをうまく統合させていくことで、心の病である「神経症」などを直していくのです。
現代の心理学の目的は、先ほども述べましたが、人の心を科学することによって、その理解を社会福祉に役立てていこうという人類の取り組みなのです。
おわりに
心理学とは、われわれがより良い生活を送れるように「心の重荷を軽くする」科学的な試み・アプローチなのです。臨床心理士という職業も人気のようで、これから世の中がもっと複雑になることで、脳科学と合わせて、重要な役割をになっていくのが心理学だと思います。
まあ、僕はフロイトの精神分析学支持しますが、心理学もアプローチとしては同じように精神病理に対する福祉的な意味合いが強いです。研究も進んできて、人の心の働きもいろいろなことがわかってきたとおもいます。ご興味があったら、是非。
参考文献
「プロが教える心理学のすべてがわかる本」大井春策監修(ナツメ社)
「心理学」(第5版)鹿取廣人他編(東京大学出版会)
「心理学をつかむ」今井久登他編(有斐閣)