ブラック企業って言葉、今では老若男女問わずに誰でも口にする言葉ですよね。
ブラック企業なんてレッテル貼られた会社は、開き直ったりなんかして、ブラックジョークみたいな感じで言われます。
僕は何度も何度もうざいくらい言いますけど、就職氷河期世代です。1990年代後半から2000年代に掛けて、ブラック企業は、まるであの時代のコロナウイルスであるかのように、平然と軒を連ねていました。

長時間労働が当たり前の時代でしたから、月に50時間以上の残業は社員にとって当然の義務みたいな風潮があって、酷い企業は1か月ってそんなに時間あった? みたいな長時間労働させる会社もありました。
当時、業界自体がブラックみたいな、証券、広告代理店、外食、小売、消費者金融、先物、不動産販売などなど。
体育会系のノリで、挨拶とかマナーとか精神が参るまで、罵倒され続ける。僕らの頃、中堅社員のリストラなんかもあって、リストラに応じない社員を一人部屋に隔離して、定時まで何もやらせない、精神が病むまでくる日もくる日も部屋から出さずに、暇な状態をつくるとか酷い会社もありました。
そんなこんなで、当然、労働者は精神を病んでいき、とうとう2010年代に入ってからコンプライアンス(法令遵守)が叫ばれるようになった。
政府は、法に則って労働者の権利を保護する法案に乗り出し、働き方改革によって社員に有給を義務付け動きが最近出てきましたよね。
2016年12月26日、厚生労働省の長時間労働削減推進本部において、過労死防止対策として、企業名の公表などに関する新しい制度が2017年1月から実施されることが決まった。
Yahoo! ニュースより
まあ、当然ちゃあ当然のことですが、忍耐強い日本人も、よく声を上げずに20年以上、非人道的な企業を野放しにしてきたことか、と感心します。
日本人てよっぽど忍耐力があるのです。
企業は、日本人の勤勉さをある時から利用し始めて、僕らの頃には、例えば家のリフォーム会社が新卒で100人以上募集してました。だいたい、あの頃のブラック企業は大量に募集だして、新入社員を新任研修の合宿から痛めつけて、ふるいに掛け残った人材で会社を運営していくなんてことしてましたから、情報不足の学生は入りやすい大量募集かけてる企業にまんまと入社させられ、1年以内で辞めてくなんてパターンがありました。
これは、現実的な話になるのですが、偏差値の低い大学の学生は、こういう募集を見て半信半疑で飛びついてしまうなんてことがあって、なぜかというと、それは学生たちは、とにかく内定を欲しがっていたからです。経済が干上がっていましたから就職するのが難しく、どんな会社でも喉から手が出るほど内定が欲しくて、結構な数、ブラック企業に入ってました。
今、俯瞰してみると、本当に肉食動物の捕食じゃないかってくらい悲惨な状況でしたね。
僕らもね、わかるんですよ、これはブラック企業だなって、何となく。
だけど偏差値低い大学は情報不足で、一般的にMARCH(明青立中法)以上の偏差値の学生は、情報共有ができていたんじゃないかなあ?
僕らの大学では、個人個人で手探りでしたね。みんなして、わかってなくて。
ちなみに僕は、就活途中でやめて、出版社希望だったので、編集プロダクションをさがしてました。
資本家と労働者との関係
人間の社会には、いつの時代でも特権階級と上級層を支える下層階級や奴隷階級が存在します。
マルクスが提唱した理論では、人類の歴史は、ずっとこういった闘争が繰り広げられていると説明します。古代には身分の差が開いて君主制が発生し、だんだんと封建性へと移行していく。権力構造はやがて資本家が社会を牛耳るようになり、産業資本主義へと変化して、階級闘争の末に社会主義が起こり、やがて上部構造である政府が下部構造の経済を支配する。全国民が富を分配する平等な社会になる、と。考えてみれば、資本家は労働者を雇って賃金を払っている訳ですから、搾取しようとする経営者がいてもおかしくない。基本的に、人類も紆余曲折があって今に至っているので、政府が経営者の搾取や労働者の権利を守る制度はだんだんに法整備されてきています。
あとはあなたのマインドしだいです。雇ってくれているからといって、労働者を人間としてみないような企業は淘汰されて然るべきなのです。そういう企業、昔はたくさんありました。今だにブラック企業は、日本社会にはびこっていますが、我が日本には、ちゃんと人権と権利、それから義務があります。
あなたはおかしなこと、例えばタイムカードを打った後に、働かされる違法残業やあなたを傷つけるようなことを言う人、コンプライアンスに反するような業務をさせられたとか、正当な対価を支払われないようなときには、ちゃんと対策して証拠を残したり、労働基準監督署に報告したり、弁護士を立てたりして、自分の身は自分で守るマインドは身につけておくべき時代だと思います。
あくまで経営者、労働者、そして株主であっても上下関係というものはないのです。民主主義社会にいる限り、どんな立場であろうと、みんな対等な関係であります。、
欧米では、パワハラが起きにくい
欧米では資本家と労働者は対等な関係であるということは、当たり前に認識されております。というのも、ヨーロッパには歴史的な流れというものがあり、18世紀にイギリスで産業革命が起こって、ヨーロッパ全土にそれが飛び火して資本家が成長していった過程で、人々は自分の身は自分で守る術を身につけていったのです。
ヨーロッパは基本的にキリスト教圏でして、経済も神との関係によって成り立っている。神の恩恵に預かっているという考え方が根強いのです。ですから、経営者が偉いという観念はヨーロッパにはありません。
カトリック教徒は労働時間も安息日も神が与えてくださったもの、という認識がありますから、経営者がどのようなことを主張しても、権利は平等な神が与えてくれたもの。あくまで資本家と労働者は対等なのです。
それに対して、プロテスタントの考えた方は、神との契約によって個である私には権利があるのです。だから神と「私」個人との契約により、すべては成り立っている。
このようにカトリックもプロテスタントも、神と「私」とは上下関係になっていても、経営者と「私」とは対等なのです。

アメリカ社会もプロテスタント信者が多く、神との関係で、契約を交わしておくという考え方が根強いです。経営者は賃金を自分に支払うのは契約的な義務だと見なすのです。
日本で、ブラック企業が相次いでできたわけ
日本人は、また欧米社会と「神」の観念が違います。
日本人は無宗教ではありません。とっかかりブログ「日本文化を外国人に紹介する~天皇について」でお話した通り、日本人にとって「会社」は「上=神」なのです。自分の属する組織は、「恐れ多くもかしこき」存在なのです。
ですから、「上」はあくまで「上」であり、公的な主張をされると日本人はかしこまってしまいます。権力に対して弱いのが日本人の特徴なのです。
そういった日本人の宗教的基盤を利用して、労働者を搾取してきたのが1990年代なのです。
「上」からの命令に従いやすい日本人の勤勉さを利用して、長時間労働をさせたり、社員や派遣を使い捨てにしたり、言葉で掌握しようとしたり、そういう企業が昔はたくさんあったのは事実です。
それから日本人は、体制を転覆させるといった考え方が薄いんじゃないでしょうか?
ヨーロッパでは、18世紀にフランスで市民革命が起こりました。それからロシアではロシア革命が、イギリスでもピューリタン革命があり、体制への反動というものが歴史的に意味をもちます。
日本では、天皇制が古代から続いていて、下克上はあったものの体制を転覆するという経験に乏しいのは明らかではないでしょうか?
そういった意味でも、ブラック企業が台頭してきたときも、日本人は悪どい体制への免疫がなかったのではないでしょうか。そういう国民性が、「働き方」の見直しがされずに長年ブラック企業が蔓延った要因になっているような気がします。
ブラック企業に入社したなと勘付いた時にすべきこと
ブラック企業というのは、相対的にみて、体質の悪い企業という意味で、ブラックが万人に悪い会社という訳ではありません。
ブラック企業であっても水が合う人もいるわけです。
ですが、入社して精神的に不安定になって来る場合、それはあなたにとってのブラック企業なのです。会社に対して不安を感じたら、すぐすべきことがあります。
これらは、入社して違和感を感じた瞬間に準備しておいた方がいいでしょう。
あまりに実態が酷い場合は、早い内に弁護士や労基署などに相談できるような態勢を整えておく。
働くと言うことは、人生そのものだと言っても過言ではなく、迷いは不要です。毅然として自分の権利を主張できるように考えておく必要があります。
終わりに
何でもそうなのですが、性善説と性悪説とがあります。
生まれながらに人は良心をもって生まれてくる。あるいは悪徳な性質をもっている。
これはどちらも人間には備わっています。要は状況によりけりなのです。
ですからわれわれは、すべてのことに柔軟でなければ生きていくのが困難です。
ブラック企業も、社会状況や労働者の国民性によるところが大きいのです。詐欺をする人は褒められたものではありませんが、いろいろな人間がいて、何を考えているのかわからない。だけど、これだけは頭に入れておくのが良いでしょう。
物事と向き合う時に、なるべく現実に即して判断することです。
なかなか難しいことかもしれませんが、これも訓練なのです。イレギュラーな日常に行き当たったらどうするかを頭の中で考えておくのです。わからなければ第三者に相談する。相談できる機関なり、方法を用意しておく。これからは個人のリスク管理がとても重要な時代に入っていきます。ますますテクノロジーは進化していくのですから当然です。
気をつけて気をつけすぎることはない。どんなことにでも言えることで、なかなか判断が難しいことも多いですが、ブラック企業に限らず狡猾な人は一定数いて、十分危険なことがあることだけは認識しておいた方がよいでしょう。